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菓子職人(第四話)配属
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菓子職人(第四話)配属

Pホテルに入社して、3か月間のトレーニー(実習)期間を終えて、ウエイター経験をカジュアルレストランで経験しました。会社から寮までの電車通勤にも慣れ、周りの景色にも慣れて、先輩方のお名前も覚えて・・・。

仕事の終わりにああ。とため息を、先輩に聞かれてしまった。お声をかけていただいた先輩は「あなたの仕事は半分は先輩のお給料から出ているんですよ」と。

世間知らずの子供は、これだけ疲れてまだそんなことを言ってやがる。と内心。

この言葉を理解するようになったのはこの後、どのくらい経ってからだろう?

一人前といえるのは、スピードメーターみたいなもので表せるのならば、簡単だが、人生経験そんな単純なものではありませんよね。

こんなことを言っては、お客様にお叱りを頂いてしまいますが、今の自分ででもこれなら良いという自己評価は、いつも疑問です。

ともあれ、東京長崎間の航空運賃は往復で、当時¥58,000くらいだったように思います。一か月のお給料分に近い金額を捻出することは思いもよらず。かといって、親元にかえってどうなる状況でもなかった私は、逃げ場のないことを覚悟するしか、他になかったのも事実でした。

どんな状況でも、一途にやってみると面白味はわいてくるもので、自然と、いろんな食材やら、お酒の名前やら憶えて、初めて見る芸能関係の人が間近で見られる興奮は、筆舌に尽くせないほどでした。

お母ちゃん、今日は会社に矢沢永吉さんが来とったとばい。(長崎のおふくろは彼の名前すら知らない)

毎日、恥の連続が、延々と続く。

お皿を運べば落とす、割る、オーダーは頻繁に間違える、オーダーミスの調理カウンターでは、手を出せ、と、

カウンターに手を出した次の瞬間、長いミートフォークが指と指の間に刺さって、抜けなくなった。良い度胸してんじゃねーか?初めて経験する、膝が合わなくなるってほんとにあるんだ。

その直後、グラスを背の高さまで積んだラックをひっくり返す。(もう、死んだほうがいいんじゃないか?って自分。)

その時の先輩の一言、「手をケガするから、箒を持ってきなさい、大丈夫か?」

一人でトイレで泣いた最初の時でした。

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