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菓子職人(第五話)凄いやつ
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菓子職人(第五話)凄いやつ

同期入社生約70名あまり、この中でほとんどの人が、大田区の社員寮にお世話になったように思います。

北は北海道、南は鹿児島、その間は、秋田、青森、仙台、大阪、日本中の地方訛りを聞きながら、新鮮なフレッシュマン生活のスタート(何しろ、周りに迷惑かりかけていた)

この中で、一番気が合ったのが、今でも親友の青森県八戸市出身の柔道がすきで、青森リンゴみたいに人懐っこい大男が、一番好きだった。

私は、長崎県出身で少林寺拳法を学生時代やっていたので、異種格闘技と、全く違う生活環境もお互い楽しかったのだろう、彼は、フランス料理のお店を経営していて、私は洋菓子店を経営している。

少しづつ違うところが、長続きしているのかもしれない。

人生の中で、苦労人というと、一番にこの彼のことを思い出す。

多かれ少なかれ、親元離れて生活すれば、楽しことばかりであろうはずはない。

では、彼のどこが凄いんだっていうと、いっつも柔道部の敗れたジャージを着て、寮内の彼の部屋へ遊びに行くとコーラにかっぱえびせんを勧めてくれて、読み古した漫画本を読みながら笑っていた。

後で聞いてみると、あの頃はご飯食べるお金がなくて、どうやって腹を膨らまそうかそればっかり考えて、一人暮らしの母親と、心臓病の弟に仕送りをしながら、青森に古い家を建ててやっていたからしょうがなかったんだと。

そのあと、ホテルの料理長になり、結婚して奥さんに仕送りの額が少ないと、母親から電話があった・・・・。

そういう理由で、いつしか離婚。そのあと、母親と、弟が彼が建てた家を巡って喧嘩になった・・・。

なんてこった。

それでも、そんな境遇を乗り越えて、フランス料理の名店を経営しつついつも会うたびに女遊びの話や、どうやったら僕が面白がるか考えてくれたこの人を、尊敬してやまない。

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